2011年4月26日火曜日

“薄すぎる”モバイルノートPC「Adamo XPS」の実力に迫る

 2009年の年末商戦に登場したデルの超薄型ノートPC「Adamo XPS」(Adamo XPS BREATHTAKER)は、わずか9.7?10.3ミリという驚きの薄型ボディを誇るエポックメイキングなモバイルノートPCだ。2010年に入り、続々とPC春モデルが各社から投入されているが、いまだにこれより薄型のノートPCは見当たらない。今回は日本市場版を入手したので、改めてその実力を
検証しよう。

【拡大画像やベンチマークテストの結果】

 ボディのサイズは、340(幅)×272(奥行き)×9.7?10.3(高さ)ミリだ。フットプリントは13型クラスのワイド液晶ディスプレイを搭載した製品としてはかなり大きめだが、最厚部でも10.3ミリしかないフォルムはとてもノートPCとは思えず、高級な画材道具のような雰囲気すら感じる。


 詳しくは後述するが、キーボードを開いた状態でのスタイルもまた独特で、オブジェのようなアーティスティックな存在感を醸し出している。このあたりのデザインやギミックについては過去に掲載した記事(上の囲み参照)が詳しいので、併せて確認してもらいたい。

 重量は公称2時間36分駆動の標準バッテリー(6セル)搭載時で約1.44キロ以
上、公称5時間17分の駆動が可能となる拡張バッテリー(12セル)搭載時で約1.56キロ以上となっている。

 ACアダプタは3ピンの電源ケーブルが多少太いものの、ウォールマウントプラグも付属し、比較的スリムにまとまっている。実測でのサイズは69(幅)×118(奥行き)×17?23(高さ)ミリ、電源ケーブルを含む重量は約308グラムだった。

●超低 rmt CABAL
電圧版Core 2 Duo、128GバイトのSSDを標準搭載

 デルのPCはBTOでスペックがカスタマイズできる製品も多いが、Adamo XPSの場合は基本スペックが固定されている。CPUは超低電圧版のCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)、チップセットはグラフィックス統合型のIntel GS45 Expressだ。

 メインメモリはPC2-6400 SO-DIMMに対応し、容量は4Gバイトとなっ
ている。データストレージにはSSDを採用しており、容量は128Gバイトを確保する。デバイスマネージャーで確認したところ、評価機のSSDはSamsungの「PB22-JS3 TM」を採用していた。リード/ライトともに高速なMLCモデルで、性能はかなり期待できそうだ。ちなみに、メモリスロットやHDDに容易にアクセスできるような小さいカバーなどは用意されていない。


 グラフィックス機能はチップセット内蔵のIntel GMA 4500MHDを利用する。DirectX 10対応でHD動画再生支援機能にも対応しており、Windows Media Player 12などでMPEG-4 AVC/H.264やAVCHDムービーをコマ落ちなく再生できる。これだけの薄型ボディなので、さすがに光学ドライブは内蔵しない。

 通信機能は、IEEE802.11a/b/g/nの無線LAN(Intel
WiFi Link 5300)、Bluetooth 2.1+EDRを標準装備する。有線LAN(RJ45)のコネクタは内蔵しないが、100BASE-TX対応のUSB変換アダプタが標準で付属しているので、有線LANでの接続も可能だ。

 端子類はボディの液晶側に配置されており、USB 2.0ポートが左右に1基ずつ、右にヘッドフォン出力、左にDisplayPort出力がある。DisplayPort出力については、まだ搭
載する液晶ディスプレイが少ないこともあり、DVI-D出力用の変換ケーブルが標準で付属するほか、アナログRGB出力用やHDMI出力用の変換ケーブルもオプションで用意されている。液晶ディスプレイの上部には200万画素のWebカメラとデジタルマイクも内蔵している。

 プリインストールOSには64ビット版のWindows 7 Home Premiumを採用しており、ほかの
選択肢は用意されていない。

●液晶ディスプレイは感圧式センサーによるロック機構を搭載

 Adamo XPSのラッチは液晶ディスプレイを閉じると、自動でロックされる。天面の先端部にある感圧式のセンサーをなぞるとラッチのロックが外れ、ディスプレイを開閉できる仕組みだ。他機種には見られない独特の仕様となっている。

 液晶ディ
スプレイはLEDバックライトを採用した光沢パネルを搭載。サイズは13.4型ワイド、画面解像度は1366×768ドットに対応する。表示品質はモバイルノートPCとしては標準的で、十分な輝度がある一方、視野角は特に上下が狭い。ヒンジの最大角度は121?122度といったところで、ヒザの上など上からのぞき込むような体勢で使う場合には少し見づらい場面があるかもしれな
い。光沢パネルの映り込みも相応にある。

 液晶ディスプレイのヒンジの位置がかなり高いところにあるため、利用時は天面の後部と底面の前部が接地し、この2辺でボディを支える格好になる。同時にキーボード面には13度前後の傾斜がつく。ボディが浮いているため、一見頼りなさそうなスタイルだが、剛性はしっかり確保されている。

●安定感の
あるキーボードと多機能タッチパッドを搭載

 キーボードのデザインはキートップの間隔を離したいわゆるアイソレーションタイプで、表面にヘアライン加工を施した金属製のキートップが高級感を演出している。主要キーのサイズは実測で約14×14ミリと大きくはないが、各キーの間隔が縦横ともに約4ミリあるため、キーピッチは約18ミリを確保する。


 キーのレイアウトには多少クセがある。特に細いキーは見あたらないが、Back SpaceキーとEnterキーの右側にキーが配置されている点は気になる。Enterキーの横幅も主要キーと大差ない(実測14?18ミリ)ので、ミスタイプを誘いやすい。

 ファンクションなど最上段のキーが主要キーから独立した小さなボタンとなっている点は英語キーボードと
同様だ。ショートカット操作などでファンクションキーを多用するユーザーは使いにくいかもしれない。また、キートップに金属を採用したためか、ホームポジションを示すマークがない点も好みが分かれそうだ。

 キーボードユニット自体の固定はしっかりしており、たわみもほとんどなく、あえて力を入れて押すと少し沈むという程度だ。金属製キートッ
プも平板な形状ながら独特のひんやりした感触と安定感があり、スイッチの反発も適度でタッチ感は良好だ。レイアウトに多少難はあるが、全体的な操作感は極薄ボディのハンディを感じさせないものがある。

 ポインティングデバイスは2ボタン式のタッチパッドを採用する。パッドのサイズは76×43ミリと十分な大きさで滑りもよいが、ボディの中央部に配
置されており、キーボードのホームポジションから少し右にずれている。左右独立型のクリックボタンは縦が約10ミリと余裕がないため少し押しにくく、樹脂製のため、押した感触もキーボードに対して軽い印象だ。

 導入されているシナプティクスのドライバは非常に多くの機能をサポートしている。パッドのエッジを利用した1本指スクロールのほか、2本
指スクロール、2本指の開閉によるズーム、2本指での回転、3本指でパッドを弾くことによるページ送りなどの機能が標準で有効となっている。

●モバイルノートPCとしては優秀なパフォーマンス

 ここからはPC USER恒例のベンチマークテストでパフォーマンスを見ていこう。まずWindowsエクスペリエンスインデックスだが、HDDスコアが「7.1」を
獲得しており、SSDの優秀さが目を引く。一方でグラフィックス関連のスコアが低いが、これはIntel GS45 Expressチップセット内蔵のIntel GMA 4500MHDを利用している製品に共通するところである。もっとも、Windows 7の操作感はスコア以上に快適な印象だ。

 SSDの読み書き速度については、CrystalDiskMark 2.2(ひよひよ氏作)も実行して調べてみた。結果は
シーケンシャルリードで200Mバイト/秒を超えているほか、ランダムライト4Kを含むライト性能も申し分なく、最近のSSDとしてもかなり高いレベルのパフォーマンスを持っていることが分かる。

 PCMark05やPCMark VantageのHDDスコアにもSSDの高性能は反映されている。PCMark Vantageではストレージ性能がほかの項目にも大きく影響するため、Core 2
Duo SU9400(1.4GHz)搭載機としては全体的に良好なスコアをマークした。一方、3DMark06、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアを見ても分かるように、3D描画性能は低調だ。

●バッテリー駆動時間は控えめだが、静音性や放熱性は良好

 バッテリー駆動時間のテストは、BBench1.01(海人氏作)で行った。無線LANで常時接続し、BBench
の設定はデフォルトの「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」および「10秒間隔でのキーストローク」としている。電源プランはデフォルトの「バランス」(バッテリー駆動時のディスプレイ輝度40%)をそのまま利用した。結果は1時間45分とモバイルPCとしてはかなり物足りない駆動時間だった。ACアダプタが使えない環境で利用する場合、拡張バッテリーを利用し
たほうがよさそうだ。

 静音性に関しては非常に優秀だ。騒音は暗騒音32デシベルの環境で本体前面から約5センチの距離で測定したが、低負荷時でも高負荷時でも無音に近い動作音だった。排気口に耳を近づけてもはっきりとした風切り音はせず、ジリジリとしたモーター音のような音が少し聞こえる程度だった。

 また、発熱はボディの奥側が中
心で、パームレストやキーボードなどにはあまり熱が伝わってこない。室温22度の環境で測定したPCMark05/3DMark06終了後の温度は、排気口のある底面左奥で43度まで上がったが、パームレストは左側が31度、右側が33度と、右が少しじんわりと温かくなる程度だった。

●超薄型デザインと実用性を見事に両立

 Adamo XPSの使い勝手や性能、静音
性などについて見てきたが、実用性という面でもかなりの仕上がりだ。メモリカードスロットがないことや標準バッテリーでの駆動時間が短いことはマイナスではあるが、Windows 7を利用するうえで性能面のストレスはまったくないし、静音性にも優れている。これだけの圧倒的な薄型ボディにもかかわらず、入力環境の面でそのハンディをほとんど感じさせないのは
立派だ。

 デザインと実用性を両立するために端子類をキーボード部ではなく液晶ディスプレイ部に搭載した発想の転換や、感圧式のセンサーをなぞることでラッチのロックを外すなどの独創的なアイデアは敬服に値する。

 高速なSSDの搭載による軽快な操作感や、唯一無二の存在感を誇るデザインの付加価値を考えると17万4000円という直販価格
も決して高くなく、むしろ安いといえるだろう。【鈴木雅暢(撮影:矢野渉)】

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引用元:アトランティカ rmt

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